前回に引き続き、大型時計の制作風景です。
前面が開閉式になっていたり、なるべく作業しやすい電池交換方法や全体の立体感なども考慮した結果、背面部分もとても大変でした。
とにかくずっと制作に専念してあまりにも忙しかったので、写真が少なくなってしまったのが残念でしたね~
金具部分もすべて自作したのですが、何度も全面部分とかみ合わせを調整して、大変時間がかかりました。 分かりにくいですがフレームや壁面もすべて鍛金作業で細かな表情が施してあります。
今回の制作には僕が日ごろ奮闘して制作する銅人形もデザインしています。
家族愛に溢れるご依頼主のご希望でお子様二人を森の中で戯れたイメージにして考えました。
通常の人形制作と大きく異なるのが、今回はモデルがいる事です。
なので出来る限り近い雰囲気を出せるかが大変難しい作業でもありました。
人や生物は写真で見ても絶対に把握出来ない動きや筋肉や空気感、表情がどれだけ伝わるかが大切だと思っています。
そしてその人がどんな遊びをどんなふうに、どんな気持ちで表現しているのかを、自身の中で形を見出していく事が僕の最も大事にしている事でもあります。
僕は金工作家としての技術は全くもって偉そうに語れるレベルでは無いのですが、それでも、技術以外にも大事な気持ちをどうにか形にしていく事は、人と直接対話して感じることを真剣に行っていなければ絶対に出来ない事だとも思っています。
これは自分の信念や姿勢が歪まなければ出来るただ一つの理念工法だと日々思っています。
それを感じてもらえるような人形を作りたくて一生懸命制作しました。
ご依頼主には沢山の写真も送って頂き、参考にさせてもらいました。
きっとこの子たちはこんな感じで笑いながら遊んでいるんじゃないかな?
そんなモデルさん二人にもこの作品が届けられると考えたらやっぱり嬉しいですよね!!
それからは葉を付けては位置を変えたり、枝のラインを修正したり、動物達もバランス何度も合わせて、振り子の速度をゆっくりする為に調整したり、怪我をさせないように角は手ヤスリをかけたり、時計の文字盤にはガラスをはめ込んだり、仕上げの着色も部分的に行わないと組み込めなかったり、本仕上げの蜜蝋液も新たに調合変えて伸びやすく柔かい感じにしたり、開閉部分の調整が1㎜狂うと直したり、とそんなこんな大苦戦の中でしたがようやく大体完成系です!
この間の写真がほとんど撮れていない事が作業時を物語っていますね。
まだまだ本当は書き足りないことがありましたが、この位で。
さて、今回は車に積んでフェリーで直接納品に行きますから、梱包も超厳重に行いました!
さあ、いざ出発!
苫小牧港から久しぶりのフェリー!
最近のフェリーは豪華でびっくりしました。
ほとんどホテルですね~ クロサワダイスケさんの弾き語りライブもあって最高の気分!言う事なし!
約17時間の船旅です。 でもビールは飲んでいません。まだ仕事の途中なので緊張感を忘れていませんからね。
無事に全てが終えたら帰りは飲めるかな~ 飲みたいな。
道中、ゆっくりと走って景色も堪能しながら、無事にお客様のご自宅に到着しました。
他人の家を見て感動したのは久しぶりです。 北海道が本当に好きなんだな~と
感じた素晴らしい新築の建物でした。
今回の時計はリビングの塗り壁面に飾って頂けるとの事でしたから、施工道具を運び、実寸計算して、壁面に穴を空けさせてもらい専用金具でしっかり固定です。
こういう時はレーザー水平器が便利ですね!
この時計作品は「森の声」というタイトルです。
普段は見えない時計の裏でひっそりと小人が見守っています。
予定よりも大幅に時間がかかり、すっかりご迷惑をおかけしてしまい申し訳無かったのですが取付も無事に完了しました。
完成後のお写真を撮らせてもらいました。(公開許可頂いてます)
喜んで頂けて本当によかったです!!
普段、あまり人に話す機会のない制作についての事やいろいろとお話させて頂き、大変楽しいご依頼を終えることが出来て一安心です。
僕が制作する時計の作品はこれまでにも大小色々ありましたが、それは現時間を知らせるだけの「モノ」ではなく、経過した人生の跡を心のどこかに留めてあげられる役割を持って欲しい「者」としてあって欲しいと願っています。
いつまでもこの時計と共にご家族の楽しい毎日を過ごしてもらい、やがてまた違った価値や気持ちが生まれてもらえると、人の人生に関わった仕事をさせてもらえたのだな~と 感慨深いものがあります。
僕にとっても学びの多いご依頼になり、心に残りました。
Y家の皆様、このようなご縁を本当にどうもありがとうございました!!
札幌戻っても頑張りますので、これからも宜しくお願い致します!